2009年6月2日火曜日

日本感染症学会の緊急提言


__________以下要約__________
今回の新型インフルエンザ、swine-origin influenza A(H1N1) (S-OIV と略す)は感染力・伝播力は強い一方で、発症時の臨床的重症度は季節性インフルエンザ(seasonal influenza)と同程度ではないかと楽観視する意見も強まっている。
しかし、米国カリフォルニア州では5%以上の例が入院し、その1/5(全体の1%)はICU で治療を受けている。これを日本に当てはめると、季節性インフルエンザと同等の1,000 万人以上が感染した場合、短期間に10万人以上がICUに入院することになる。このことから日本感染症学会は、現時点でも軽症であると言い切ることはできない。今秋以降は1968 年の香港かぜ以来の大流行が起こる可能性は極めて高くなると考える。
① 過去の実態から学ぶ
厚労省は新型インフルエンザが蔓延するとわが国では32万人から64万人が死亡すると試算している。これはスペイン風邪流行の際のデータから推定したものだが、この時とは医療事情が違う。その後の医療の発達により被害は小さくなったが、香港風邪流行時には、第1波では死亡者が2万人程度、翌年の第2波で5万人を超える被害が出た。現在の人口に当てはめるとと8~9万人の死亡者となる。
今回の新型インフルエンザが大流行した場合、その被害は香港風邪の場合を大きく超えるようなことはないと思われる。しかし季節性インフルエンザでは毎年1万人前後の死亡者が出ており、医療現場は多忙を極めているのが実情である。そのことから考えれば、数万人の死亡者が出る流行が起これば入院ベッドが不足し、人工呼吸器や救急車が足りない、病院や診療所の外来は混雑を極めるなど、準備の不足は医療現場の大混乱となって現れるのは必至だ。
ところで、スペイン風邪当時の死亡者の大多数は発展途上国に集中しており、今回の新型インフルエンザによる死亡も経済状態や医療水準の反映といわれている。日本は経済や公衆衛生、個人の栄養・感染防御能も向上している。日本で確立したインフルエンザの診断と治療を生かすことができれば被害を大幅に制御することが可能と思われる。
また、20世紀の新型インフルエンザは、すべて2回の流行を起こしている。香港風邪では第1波は小さな流行だったが、翌年に大きな第2波の流行となった。ゆえに、最初の流行が小規模に終わっても、決して油断は出来ない。現在は症状も軽く、患者数も少なくても、今年の秋か、冬に大きな流行になると専門家は警戒する。
② いずれ数年後に誰でも罹患する
過去のどの新型インフルエンザでも、出現して1~2年以内に25~50%、数年以内にはほぼ全ての国民が感染し、以後は通常の季節性インフルエンザになっている。今回のS-OIVもやがては10年から数十年間は流行を繰り返すと見込まれる。すなわち、今回の新型インフルエンザの罹患を避けることは難しいのだ。
③ 青壮年層が多いのには理由がある
スペイン風邪では青年・壮年層を中心に世界中で4000万人の死亡者が出た。その後のアジアかぜや香港かぜの際にも初期には若い年齢層に被害が多く見られ、数年後に被害は高齢者中心に移行することが観察されている。高齢者の多くは過去にインフルエンザの洗礼を何度も受けたため免疫のメモリーがありますが、若年層ではそれが乏しいため新型が流行する初期には被害が甚大となる。若年層の多くが免疫を保持するようになると、相対的に抵抗力の弱い高齢者に被害の中心が移って行くのだ。新型インフルエンザの蔓延期には若年層のインフルエンザ患者が多数発生して医療機関を受診するようになることが予想される。
④ 初期から一般医療機関受診者が激増する
厚労省は発熱相談センターや発熱外来の設置を行っているが、インフルエンザは発熱前から感染性を持つことや、患者が多数発生すればもはや少数の発熱外来では対応しきれない。欧米では発熱外来を設置する動きはない。患者の中には自分の症状を新型インフルエンザだとは自覚せずに一般医療機関を受診する方が当然存在する。かかりつけ医がいれば当然かかりつけ医を受診する。流行拡大期には、自分の診療所ではインフルエンザの診療は行わないとするのは不可能となる。各地域の実情に合った対応策が必要となる。
⑤ 重症例には細菌性肺が多く見られる
今回のインフルエンザは(メキシコを除けば)死亡率0.1%台と、季節性インフルエンザを少し上回る程度とみられている。
多数の死亡例が出たメキシコでは、死亡例のほとんどが発症から1週間以上を経て受診しており、その多くは細菌性肺炎を併発していたと言わる。備えるべきは多数発生する重症肺炎への準備であり、重症呼吸不全に対応するレスピレーターの整備、そして予防である。CDCは、今回の流行における入院の契機は、細菌性肺炎脱水であり、その64%が慢性呼吸器疾患、免疫低下~不全状態、慢性心疾患、糖尿病、肥満などの基礎疾患や合併症を持っていたとしている。
しかし、大多数の患者は軽症で改善治癒しており、たとえ肺炎を併発しても多くは軽症で、在宅治療が可能である。また、肺炎球菌ワクチンの接種を推奨する動きがある。
⑥ うがい、手洗い、マスクが効果的
流行が懸念される時期には不要不急の外出を避け、人ごみにはなるべく出ない、外出時にはマスク着用、互いの咳エチケットの遵守、外出後のうがい手洗いが必要である。
新型に対するワクチンは、本年の秋から冬には間に合わない可能性も考えられる。ハイリスク群においてはノイラミニダーゼ阻害薬の予防投与も考慮すべき。
マスクの有効性については賛否両論がある。日本では肯定的な意見が多く、一方、欧米では否定的な意見が多い。うがいの有用性については、インフルエンザそのものではなく、上気道感染症やインフルエンザ様気道疾患に対する予防効果が認められる。急性呼吸器疾患等に対して手洗いの予防効果が認められる。
⑦ 医療従事者はサージカルマスク、手洗い
国内で爆発的に患者数が増加した際には多数の患者が全ての医療機関を受診するため、厳重な防護服やヘルメット、ゴーグル、手袋、等の着用は実用的でない。以上見てきたように通常の感染予防策で臨めば大きな心配はなく、医療機関では、サージカルマスク手洗いを原則とした感染防止策で臨むべきである。
重症肺炎を併発した新型インフルエンザ患者における医療処置(痰の吸引、その他)ではN95マスクやゴーグルなどの使用が考慮されるべきではある。必要に応じて抗ウイルス薬の予防内服も検討すべき。
⑧ 全ての医療機関が対策を行うべき
新型インフルエンザの流行蔓延期にはすべての医療機関に患者が受診することが予想される。普段から診ている通院患者からも新型インフルエンザの患者は多数出てくると予想され、診療を忌避することは出来ない。全医療施設が取り組むべき対策を構築し、効果的な対策が行われることを望む。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄要約以上 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

タミフルの予防服薬、マスクの推奨など、「?」と思う点もありますが、第二波は大流行となる可能性があること、一般医療機関すべてに患者が押し寄せること、現在の季節性インフルエンザ流行時だけでも病院は忙殺されているのが現状ですので、重症化頻度が少々増えただけで、医療が破綻しかねないことなどが伺えます。普段から健康に留意し、自分で対処できることは自分で対処できるように工夫しておくことが有効だろうと思います。
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