2009年4月19日日曜日

バイオディーゼル燃料を学ぶ 3 (2007/07/24)


日本の軽油事情

 バイオディーゼル燃料は軽油の代替燃料です。私がバイオディーゼル燃料に注目したのは、先にも述べましたが、軽油が農機具用途など食料生産に関わる燃料だからです。この分野は次世代新エネルギー(私は本命は水素エネルギーだと思っていますが)にシフトしてゆく時に、新エネルギーの普及が遅れる分野ではないかと私は危惧しています。つまり、石油が高騰し手に入りにくくなる、しかし燃料電池トラクターの普及は進まない、そんな事態を想像して不安に思っているのです。そんなわけで、水素エネルギーにシフトしてゆく端境期をしのぐ支援技術として、バイオディーゼル燃料に注目しているのですが、ここで現在の日本の軽油事情をみてみましょう。

 日本国内の石油製品(ガソリンとか軽油とか灯油とか)需要のうち、85%は原油で輸入して国内で石油製品に精製しています。残りの15%は石油製品で輸入していますが、そのほとんどがガソリンと灯油です。

 石油連盟の統計資料によれば、2005年度の日本の石油製品(アスファルトなどを除く)の需要は合計で、2億8044万kl。そのうち最も需要の多い石油製品はガソリンで、6142万kl。全体のおよそ22%に相当します。軽油の需要は3714万klで、およそ13%にあたります。軽油の需要は近年3700~4000万klくらいを推移しているようです。

 軽油需要の用途として最も多いのが、自動車用用途で、3587万kl。これは軽油需要のおよそ96%にあたり、軽油のほとんどが自動車用途に使用されていることがわかります。国内の食料生産に関わることになる農業・水産用途の需要は、70万kl。全体のおよそ2%にすぎません。

日本の植物油事情

 ヨーロッパやアメリカ、東南アジアでは、それぞれ菜種、大豆、パームの新油を使ってバイオディーゼル燃料を生産しています。これに対し、日本のバイオディーゼル燃料は廃食用油を再利用する形で生産されているところに特徴があります。これはバイオ資源を食料として利用し、それをさらに燃料として利用するという点で、資源の有効な利用法であり、食料との競合を回避するという意味でも優れています。一方では原料である廃食用油そのものがどんな油脂だったのか(菜種油、大豆油、米油etc.)、どんな使われ方だったのかがまちまちであるため、原料品質が一定ではなく、製品としてのバイオディーゼル燃料の品質にもばらつきが出てきやすいという面があります。

 今後バイオ燃料の需要が高まれば、直接的(農産物の用途の競合)に間接的(作付け・耕作地の競合)に影響を受け、植物油の価格は高騰することが予想されます(実際そのようになってきているようです)。もちろん食用油に限らず、小麦、大豆、家畜飼料など食料価格の上昇は、食糧自給率の低い日本に影響を与え始めています。マヨネーズ価格が上がったり、ラーメン・うどん(天ぷらうどんならなおさら)、お好み焼きなどの粉モノ、大豆製品である味噌醤油も、材料費の高騰によって影響を受けます。畜産農家も飼料の値上がりに頭を痛めているという報道もあります。

 話しを食用油に戻しましょう。それでは日本国内の食用油事情はどのようなものでしょうか。2004年度の日本の植物油供給量(需要量であり消費量)は、およそ260万トンで、これはここ数年横ばいです。種別では菜種油が最も多く、100万トンで、全体の38%。以下、大豆油、パーム油と続きます。その他の綿実油、サフラワー油、ゴマ油、コーン油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、米油、オリーブ油などは合計しても全体の17%程度にとどまります。日本の植物油供給は、原料としてあるいは製品として、ほとんどが輸入に頼っており、唯一の純国産食用油といえる米油の生産量は10万トンほどで、全体の4%程度しかありません。

 日本の植物油の需要用途は、80%が食用、20%が工業原料(洗剤、シャンプー、化粧品等の原料)として使われております。80%の植物油が食用として、家庭や飲食店、食品工場で使われますが、そこからで排出される廃食用油は、全体で40~50万トンと推測されます。つまり、毎年260万トンの食用油が消費され、ここから年間40~50万トンの廃食用油が排出されているわけです。

 その半分が食品工場や飲食店から排出され、これはほとんど回収されておりまして、飼料や肥料、石けん、インク原料、ボイラー燃料などとして再利用されています。残りの半分は一般家庭から排出されており、こちらはほとんどが燃やす、流す、埋めるといったかたちで処分されております。日本のバイオディーゼル燃料生産量は現在0.2万klで、その9割が京都市だそうです。

バイオディーゼル燃料は圧倒的に足りない

 思い出していただきたいのですが、日本で消費されている軽油需要量はおよそ年間4000万klです。比重が0.80~0.84だそうですから、換算するとおよそ3300万トンになります。日本で排出される廃食用油40~50万トンをすべてバイオディーゼル燃料に転換できたとしても、軽油の年間消費量の1%強程度にしかなりません。

 ところで米油という言葉が出てきましたが、米油は米糠から油を搾ることで出来ます。米油は原料から純国産の植物油です。平成17年現在、耕作放棄地は日本全体でおよそ40万haあります(農林水産省農林水産基本データ集)。これら休耕地はもともと田んぼだったものが多く、稲作をするのが理にかなっていると考えられます。日本中の休耕地を利用して工業米を生産し、そこから純国産バイオ燃料を生産したとしたらどうでしょう。まさに油田ですね。

 食味よりも収量に優れた工業米玄米100トンから、精白米90トンと米糠10トンが得られると考えられます。精白米を発酵させエタノールを取り出せばバイオエンタノールです。かたや、米糠10トンからは米油1.8トンが得られます。日本中の休耕地を利用して工業米を生産した場合ですと、米油が5~6万トン得られると推測されているようです。この米油をすべてバイオディーゼル燃料に転換しても、先の廃食用油40~50万トンと併せて45~55万トン、軽油需要の1.6%といったところです。

 それでは、米よりも油脂としての収量の多い菜種を休耕地で栽培し、菜種の新油を全部バイオディーゼル燃料に転換したらどうでしょう。どうやらその場合でも廃食用油40~50万トンと合わせて、軽油需要の2.5%程度にとどまるとの試算があるようです。

 完全に国内で生産できるバイオディーゼル燃料は本当に限られています。二酸化炭素排出抑制や石油資源の枯渇といった点から軽油にバイオディーゼル燃料を混入しようにも、国産バイオディーゼル燃料は圧倒的に足りないというのが現状です。

 欧州で普及しているバイオディーゼル燃料ではありますが、世界全体でみますと、軽油の年間消費量が約5億6000万トンなのに対し、バイオディーゼル燃料の生産量は160万トンと、世界全体で見れば0.3%にすぎません。生産量の多い大豆油、菜種油、パーム油を合計した6600万トンを食用とせず、すべて燃料にしても全世界の軽油消費量の12%にとどまるとのことで、現実には、現在の植物油生産ではバイオディーゼル燃料だけで現在の軽油消費を完全に代替することは不可能なのです。実際のところバイオディーゼル燃料の役割は、軽油に混入し、軽油消費を抑えることになるでしょう。

 バイオディーゼル燃料の生産を増やすにはどうしたらいいか。一つに耕地の拡大が考えられます。しかも熱帯雨林を破壊することなく、食料用耕地と競合することなくとなれば、砂漠を緑化するなど、これまで耕地でなかったところを耕地としてゆくことが必要です。もっともこの場合には水の問題もからんできます。

 また一つには、藁、籾殻、木質廃材など、これまで捨てられていた未利用バイオ資源からバイオディーゼル燃料を取り出す、BTL(Biomass-to-Liquids)軽油の技術の確立が求められます。しかし、おそらくそれらをもってしても、現在の軽油消費を完全に代替することは無理なのではないかという気がします。

 と、ここで冒頭に戻るのですが、バイオディーゼル燃料で現在の軽油消費を代替することはできない。しかし、食料生産に関わる70万トンの軽油を、いくらかでもバイオディーゼル燃料で支援できれば、多少でも糊口をしのぐ足しになるのではないか。というのが私のスタンスです。そのために自分たちにできることということで、小規模プラントから稼働できるバイオディーゼル燃料に関心を持っているのでした。


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