2009年4月21日火曜日

逝きし世の面影 第四回



『日本を支配している異常な制度について調査すればするほど、全体の組織を支えている大原則は、個人の自由の完全な廃止であるということが、いっそう明白になってくる』『個人が共同体のために犠牲になる日本で、各人がまったく幸福で満足しているようにみえることは、驚くべき事実である(オリファント)』

『絶対専制支配が行われている日本において、個人は時に立憲的なヨーロッパ諸国家においてよりも多くの権利をもっていた(ヴェルナー)』
『江戸には現に二つの社会が存在していて、一つは武装した特権階級で、広い城塞の中に閉じこめられており、もう一つは武器は取り上げられ前者に屈服させられているが、自由から得られる利益をすべて受けているらしい(アンベール)』
『日本人は完全な専制主義の下に生活しており、したがって何の幸福も満足も享受していないと普通想像される。ところが私は彼ら日本人と交際してみて、まったく反対の現象を経験した。専制主義はこの国では、ただ名目だけであって実際には存在しない』『自分たちの義務を遂行する日本人たちは、完全に自由であり独立的である。奴隷制度という言葉はまだ知られておらず、封建的奉仕という関係さえも報酬なしには行われない。勤勉な職人は高い尊敬を受けており、下層階級のものもほぼ満足している』『日本には、食べ物にこと欠くほどの貧乏人は存在しない。また上級者と下級者との間の関係は丁寧で温和であり、それを見れば、一般に満足と信頼が行きわたっていることを知ることができよう(フィッセル,1833)』
『日本人は身分の高い人物の前に出た時でさえめったに物怖じすることのない国民』『青少年に地位と年齢を尊ぶことが教えられる一方、自己の尊厳を主張することも教えられているのである(スエンソン)』
『日本の上層階級は下層の人々を大変大事に扱う』『主人と召使の間には通常、友好的で親密な関係が成り立っており、これは西洋自由諸国にあってまず未知の関係といってよい(スエンソン)』
『いたるところに見かけるこの礼儀正しさのなかに、私は民主的―ほかに適切な言葉がない―と呼んでもよさそうなものを感じる。下の者が礼節や服従の義務を果たした後で、明らかにそれとわかる個人的な興味を物事に示す様子を見て私はそれを感じる(ラファージ)』
『卑屈でもなく我を張ってもいない態度からわかるように、日本のあらゆる階層が個人的な独立と自由を享受していること(バート)』

 日本を訪れた欧米人がすべからく感じたことが、日本は『子どもの楽園(オールコック)』であるということです。日本の子供はみな幸福そうで可愛らしく、日本人は子供をとてもよく可愛がるという印象を持ったようでした。

『私は日本が子供の天国であることをくりかえさざるを得ない。世界中で日本ほど子供が親切に取り扱われ、そして子供のために深い注意が払われる国はない。ニコニコしているところから判断すると、子供達は朝から晩まで幸福であるらしい(モース)』
『私はこれほど自分の子どもに喜びをおぼえる人々を見たことがない。子どもを抱いたり背負ったり、歩くときは手をとり、子どもの遊技を見つめたりそれに加わったり、たえず新しい玩具をくれてやり、野遊びや祭りに連れて行き、子どもがいないとしんから満足することがない。他人の子どもにもそれなりの愛情と注意を注ぐ。父も母も、自分の子に誇りをもっている…(バード)』
『私は日本の子どもたちがとても好きだ。私はこれまで赤ん坊が泣くのを聞いたことがない。子どもが厄介をかけたり、言うことをきかなかったりするのを見たことがない。英国の母親がおどかしたりすかしたりして、こどもをいやいや服従させる技術やおどかしかたは知られていないようだ(バード)』
『怒鳴られたり、罰を受けたり、くどくど小言を聞かされたりせずとも、好ましい態度を身につけてゆく』『彼らにそそがれる愛情は、ただただ温かさと平和で彼らを包みこみ、その性格の悪いところを抑え、あらゆる良いところを伸ばすように思われます。日本の子供はけっしておびえから嘘を言ったり、誤ちを隠したりはしません。青天白日のごとく、嬉しいことも悲しいことも隠さず父や母に話し、一緒に喜んだり癒してもらったりするのです』『それでもけっして彼らが甘やかされてだめになることはありません。分別がつくと見なされる歳になると―いずこも六歳から十歳のあいだですが―彼はみずから進んで主君としての位を退き、ただの一日のうちに大人になってしまうのです(フレイザー婦人)』
『十歳から十二歳位の子どもでも、まるで成人した大人のように賢明かつ落着いた態度をとる(ヴェルナー)』

 欧米人は、日本を訪れるその船上からすでに日本の景色に魅せられ、日本の自然景観の美しさと、それに調和する日本の家屋の様子を、手放しで賞賛しています。

『郊外の美しさはたとえようがない。どこに足を向けようと豊饒ですばらしい景観だった(ベルク)』
『苔むす神社に影を落としている巨大な杉の樹。言いようもないほど優美な幾何学的曲線を描く円錐形の火山。油断なく飛び石伝いに渡らなければならない渓流。蜘蛛の糸のように伸びて一歩踏むごとに震える吊り橋が懸かる深い谷川。野の花が絨緞のように敷きつめ。鶯や雲雀の啼き声が響き渡り、微風の吹く高原。霧が白い半透明の花輪となって渦巻く夏山。深紅の紅葉と深緑が交錯する谷間。その谷間から上を見上げれば、高く聳える岩壁は鋭い鋸歯状の線を描き、青空をよぎっている。ー確かに日本の美しさは、数え上げれば堂々たる大冊の目録となるであろう(チェンバレン)』

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