2009年4月20日月曜日

もしも私が家を建てたなら 1 (2007/09/02)

 エネルギーと資源のことを考えるとどんな家がいいのか。世界金融危機というご時世ではありますが、空想するだけならタダなのでちょっと空想してみましょう。もしも私が家を建てたなら…。まずは、日本のエネルギー事情をおさらいしてみます。

日本のエネルギー事情

 資源エネルギー庁の「エネルギー白書2006」によれば、日本の一次エネルギー供給は、22,941×10の15乗J(ジュール)だそうです。ここでは22,941,000兆Jと表しておきましょう。その内訳は石油が46%、石炭が21.5%、天然ガスが14.6%、原子力が10.8%、そして水力・地熱・太陽光や風力などの新エネルギーが6.3%となっています。この一次エネルギーは、ガソリン・軽油・灯油・LPガス等の石油製品、都市ガス、そして電気といった二次エネルギーに転換され、産業や日常生活に使用されるわけです。二次エネルギーの形態としては電気と石油製品がそれぞれ全体の40%前後とこの二つで二次エネルギーの大半を占めます。

 ところで、この22,941,000兆Jという一次エネルギーがそのまま消費されているわけではありません。特に電気は、発電時や送電時にエネルギーの損失があります。それがいかほどかといいますと、最終的に家庭や事業所、産業などの消費者に届くまでに、投入された一次エネルギーの実に65%が失われています。この失われたエネルギーは大気や水を温めるのに使われ、地球の温暖化に一役買っています。65%損失するということは、たとえ消費段階で100%の利用効率であったとしても、一次エネルギー投入段階から見れば35%の効率しかないといえます。また、65%損失するということは、もし発電・送電損失のない理想的な電気利用があれば、現在の電気エネルギー消費構造のままでも、発電に必要な一次エネルギーの消費を65%減らせるということもできます。ちなみに、一般電気事業用に投入される一次エネルギーは、原子力が3割、火力発電用石油が1割弱(火力発電用天然ガスが25%,石炭が26%,水力・太陽光・風力等が10%)なので、65%のエネルギー損失というのは一次エネルギーでいえば原子力と発電用石油を併せた分よりさらに多いことになります。

 『お得です』という売り文句でオール電化住宅を勧める文句を見聞きしますが、この効率の悪いエネルギー浪費型の電力利用をまかなうため、いったい何に一次エネルギーを求めるのでしょうか。「オール電化」を指向するのなら、なによりもまず「全体のエネルギー消費量を少なくする」ことこそが大前提です。その上で「リスクの少ない安定供給可能な発電方法」「送電損失の少ない送電方法」「損失が少なく安定した蓄電方法」といったバックボーンがあって初めて意義をなすものであると考えます。それを伴わずして「オール電化」を推進することは、逆にエネルギー資源の無駄使いとエネルギー安全保障上のリスクを膨らませることになるでしょう。ちなみに私は、原子力発電だろうが何だろうが人のやることにミスやトラブル、不測の事態は付きものだと思っております。その際のリスクの深刻さを考えたとき、原子力は人が手を出すべき技術ではないと思います。

現在のエネルギー消費のままで代替え可能なのか

 今後、温暖化ガスの問題と石油枯渇の問題の両面から、石油に頼れない時代になることは明白です。否応なくエネルギー構造の転換が必要になります。当面は天然ガスの需要が高まるでしょうが、これもまた同様にいつまでも頼れるものではありません。また、前述の通り原子力は人が手を出すべき技術ではありません(と私は思います)。石炭の埋蔵量は石油・天然ガスに比べて非常に多いものですが、窒素酸化物、硫黄酸化物など大気汚染、酸性雨の原因となる副産物が多いため、そのまま燃焼させることにも問題があります。石炭の改質技術も進んでいるようですが、結局は古代に炭素同化された化石燃料を現代にまとめて燃焼させているだけなので、問題を先送りするだけのような気がします。

 再生可能エネルギーに関しては、太陽光発電、風力発電、マイクロ水力発電、など、その場所に適した発電方法を組み合わせていくことになるでしょう。バイオマスエネルギーは古来人類が利用してきたエネルギーであり、現在でも薪、木炭、ペレットといった木質燃料の形で熱源として利用しています。薪ストーブの燃焼効率はとても高いものです。また、木質だけではなく、作物や糞尿・生ゴミ等の有機廃棄物などのバイオマスからはバイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガスを精製し燃料として使えますし、バイオエタノールや天然ガスと同様にメタンを主成分とするバイオガスは燃料電池の水素供給源としても利用できます。

 高騰するだろう石油や天然ガスを大事に使いつつ、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを普及させつつ、これらさまざまな一次エネルギーを動員しながら利用の効率化を図り、石油エネルギー構造から水素エネルギー構造へシフトしてゆくことになるだろうと予想いたします。では、はたして現在の石油エネルギーの消費量を、そのまま水素エネルギーは代替えしてくれるのでしょうか? そもそも水素は電気の別形態ともいうようなもので、電気と同様に二次エネルギーでありますから、その水素の供給源である一次エネルギーを何に求めるのかという問題があります。そしてそれが現在のエネルギー消費をまかなうほどの供給が見込めるのかとなると私は楽観的にはなれません。

 市川勝先生の本『水素エネルギーがわかる本―水素社会と水素ビジネス』を参照してみます。それによりますと、水素の供給源としては、現在稼働している産業設備から副生成物として発生している水素が既にあり、それを利用することが考えられることが述べられています。日本の石油精製所、製鉄・コークス工場、食塩電気分解工場から得られる副生成物としての水素の量は、年間約 238億Nm3(標準立方メートル)だそうです。ここから自家消費分を差し引き、外部供給可能な水素量は、年間約 100億Nm3。また、シリコン・アルミ工場から出る副生水素に、そこで発生するメタノール廃液から水素を製造すると、供給可能な水素量は、年間約 50億Nm3だそうで、以上を合計すると年間150億Nm3の水素が日本の既存の産業設備から供給可能ということになります。これを燃料電池に供給すると、240億kWhの電力と、60℃のお湯が5250億リットル得られる勘定になるとのことです。この240億kWhの電力をJ(ジュール)に換算すると、86,385兆J(1kWh=3600J=860kcal)となります。

 ところで冒頭で紹介したとおり、「エネルギー白書 2006」によると日本の総一次エネルギー供給は、22,941,000兆Jという莫大なものです。 
 石油・石炭・天然ガス・原子力などの一次エネルギーから発電し、二次エネルギーである電力を得ているわけですが、日本において一般電気事業用に投入される一次エネルギーの合計は、9,545,000兆J。そのおよそ65%は発電送電時に損失し、消費レベルにおいては、民生家庭用電力供給量は、957,000兆J、民生業務用電力供給量は、980,000兆J、産業用電力供給量は、1,531,000兆Jにのぼります。こうしてみますと、既存の産業設備から得られる副生水素をかき集めても、民生家庭部門の電力供給量の10%弱にすぎません。一般電気事業用一次エネルギーと比すと実に1%弱です。もっとも、民生家庭用電力は給湯や暖房に使われている分もありますから、燃料電池ならその分を熱として供給できるので割り引いて考える必要はありますが。
 これはあくまで電力の話しで、運輸用エネルギーのことは加味しておりません。では運輸部門との比較ではどうでしょう。日本の運輸用燃料はガソリン・軽油あわせてエネルギーベースで1兆2406億kWh(4,466,000兆J)です。日本の既存産業設備から得られる水素をすべて自動車用燃料電池に供給しても5%にしかなりません。
 しかも、そもそも石油精製、製鉄・コークス、シリコン、アルミなどは有限資源産業ですし、されにその精製過程で化石燃料が使われているのですから。既存産業設備から排出される水素を有効利用しているということであって、石油・石炭・天然ガスに依存していることにはかわりありません。

 では、ほかに水素を供給できそうな一次エネルギーはというと、太陽光発電、風力発電といった自然エネルギーということになります。しかしこれをもっぱら水素生成だけに使うのは逆に非効率なので、あくまで、需要の少ない時間帯に発電した電気を水素という形態で貯蔵するといったような、発電の有効利用として水素への転換が見込める一次エネルギーでしょう。太陽光発電、風力発電、マイクロ水力発電といった自然エネルギーが今後どの程度普及するかということが課題になります。しかしそれも現在のエネルギー消費をまかなうとなると難しいのではないかと懸念されます。

 もう一つはあまり認めたくはないのですが原子力です。夜間など需要の少ない時間帯に生じる電気を、これまた水素という形態で貯蔵し、エネルギー利用効率を高めるために利用することになります。

 そして、もう一つはバイオマスです。未利用の有機物を有効活用ということで、有機物の水素発酵、ならびにメタン発酵後に水素改質を行い、有機物を水素という形に転換し電力供給源にするというやり方です。
 先ほどの「水素エネルギーがわかる本」の中で市川先生は、家畜排泄物(糞尿)、下水汚泥、食品廃棄物(生ゴミ等)、廃棄紙、有機性産業廃棄物、農業廃棄物(稲藁、籾殻等)、製材工場などの残材、建設発生木材、林地残材など、日本のバイオマス潜在量は原油換算で、2100~2400万トンと試算されていることを紹介されていました。これは日本の原油需要のどの程度に相当するのでしょう。日本の原油輸入量は、およそ2億1000万トン。つまり、日本の潜在的なバイオマスエネルギーは現在の原油消費量の1割に過ぎないということです。
 それに、家畜排泄物や食品廃棄物は、エネルギー投入の大きな食肉生産や飽食の象徴でもある食べ残しによるものなので、これが多いということは決して健全なことではありません。未利用バイオマスを有効に利用しようとすることは大事ですが、だからといってバイオマスの無駄遣いが奨励されるべきではないわけで、食べ物は無駄なく大事にいただきたいものです。

 ということで、つまるところ可能なエネルギーを総動員し、それを水素エネルギーという媒体を利用して効率的に活用してゆくことが必要であるといえますが、現在のエネルギー消費をそのまま代替えしようと思ってもそれはとても無理だろうと思えます。水と二酸化炭素から水素と酸素と有機物(ベンゼンなど)を生成するというような技術が確立し普及しない限り、現在のような高エネルギー消費社会を継続するのは不可能でしょう。逆に言えば、そもそも今のエネルギー消費を代替えしようという発想に無理があるのであって、得られるエネルギーでまかなえるように、エネルギー消費の構造、エネルギー需要のありようを工夫すべきです。

エネルギーシフトの時代こそ省エネを

 となれば、現在のエネルギー消費を見直し、根本的にエネルギー消費の少ない社会構造・社会様式を目指さざるを得ないのではないでしょうか。それはただ単に、エネルギー効率のよい省エネ家電や、燃費のいい自動車といった省エネ技術だけではなく、長時間人を活動させる労働形態や消費形態のありよう、人の慾望を煽り経済活動を刺激するために多大なエネルギーを投入する商業活動のありよう、エネルギー投下の大きな食材を使いながら食残の多い食生活のありよう、簡単便利を求める生活様式のありようなど、生活や社会様式全般に省エネという視点が求められるべきでしょう。私は石油枯渇に伴うエネルギー構造の転換期にあたってはエネルギー危機と大きな社会的混乱があると想像いたします。そう思えばなおさらのこと、生活に要するエネルギー依存を少なくしておいたほうが有利です。日本は今、石油エネルギー構造から水素エネルギー構造への引っ越し期限が迫っているにもかかわらず荷物の整理が全然進まず、新しい住処も、その間の移動方法も定まらないような状態といえましょう。「引っ越しするときは身軽に」が基本です。ですから、もしも私が家を建てるなら、エネルギー消費の少ない家を建てるでしょう。

次回はエネルギー消費の少ない家についてもう少し具体的に考えてみたいと思います。

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