2009年4月20日月曜日

食糧自給率 (2007/09/23)

 私はこんなふうに考えています。
「水・食料・エネルギー」を自分で自給できれば自立して踏ん張れる。
「水・食料・エネルギー」を相手に握られれば生殺与奪の権を奪われる。
相手の「水・食料・エネルギー」を握れば相手を支配することができる。
不足分は高度な外交戦略によって調達しなくてはならず、難易度が高い。

 「水・食料・エネルギー」を奪われないように、売り渡さないように、そして「水・食料・エネルギー」を自分でまかなえるように、というのが私の基本的な考えです。完全自給は困難であっても、できるだけ自給率を高めておく、あるいは自給率を高められる体制に切り替えられるよう用意をしておくことはきわめて重要な国の安全保障であると考えます。ですから、「日本は他のことで稼いで、食料は外国から買ってくればいい」という考えには賛成できません。日本がいつまでそんな羽振りのいい状態とは限りませんし、そもそも外国の食料生産だってあてにできるとはかぎりませんから。

 その観点から私が日本の農業に提起したいのは、「世界市場で競争できる農業」ではなく、「シーレーンが封鎖されても生き延びる農業」です。そこで、いかに自立可能な農業、持続可能な農業を模索していくかという立場から、いささか考えを巡らせてみたいと思います。とはいえ、私は農業についてはまったくの部外者なので、実情を知らなかったり、間違って考えていたりするかと思います。そのような点はご指摘ご教示いただければ幸いです。

1.日本の自給率

まずは食糧自給率について考えてみたいと思います。
農林水産省発行「我が国の食料自給率-平成17年度 食料自給率レポート-」

■品目別食料自給率
 同一品目なら単純に国内生産量と国内消費量との重量比で自給率を表すことができます。
   品目別自給率(%)=国内生産量(t)/国内消費仕向量(t)×100

■総合食料自給率
 違う食料をどうやって同じモノサシに乗っけるかということで、モノサシの揃え方にいくつか方法があります。その食料の熱量(カロリー)にモノサシをそろえるのが「カロリーベースの自給率」、金額にモノサシをそろえるのが「生産額ベースの自給率」、単純にいろんな食料の重さを加算して重量にモノサシをそろえるのが「重量ベースの自給率」となります。日本では、重さの違う様々な食料を単純に足した重量ベースの自給率は、食糧需給全体の実情を把握するのには適さないという観点から、カロリーベースを採用し、他の国の自給率を参照する際にもカロリーベースに換算して比較しています。

 カロリーベースの自給率は、日本の供給されている(日本で消費されている)熱量の合計でのうち、国産でまかなわれている分の割合がどれほどであるかを示しているものです。その際、畜産物においては輸入飼料で生産された分は勘定しないことにしています。具体的には、豚肉の品目別自給率(重量ベース自給率)は50%ですが、豚肉のカロリーベースの品目自給率は、それに飼料自給率の11%を掛けて、6%となります。カロリーベースの総合食糧自給率は、1人1日あたりの国産総熱量/1人1日あたりの供給総熱量×100で表されますが、この総熱量を求める際に前述の各品目のカロリーベースの自給率が使われます。

 平成17年度の日本の1人1日あたりの総供給熱量は、2,573(kcal/人・日)。
そのうち国内生産食料の1人1日あたりの供給熱量は、1,021(kcal/人・日)。
したがって、日本の食糧自給率はカロリーベースで39.7%、約40%です(金額ベースの総合食糧自給率は69%)。自給率が40%ということは、1億2700万人の4割、5100万人分の熱量しか生産できていない、7600万人分の熱量は自力では生産できていないともいえるわけです。

 ところで、この「供給熱量」というのはなんなのか。つまるところ「消費熱量」ということでしょう。日本で暮らす人1人あたりにならすと、1日2573kcal消費している勘定になるということです。では一日の生活に必要な熱量はどれくらいでしょう。デスクワーク中心の中肉中背の成人男子で1日2200kcalの熱量を必要とすると考えられます。ですいから、老若男女全部ひっくるめて一人2573kcalというのは多すぎです。実際には食べ過ぎ、食べ残し、売れ残りなどで無駄になっている食品の分も加わっていると考えられます。この現在の食料消費構成のまま、徹底的に無駄を省いて、仮に1人1日あたり2200kcalの供給熱量としたと仮定して換算した場合、カロリーベースの食糧自給率は46.4%になります。ついでに申しますと、同様に2000kcalと仮定して換算すると、51.1%になります。

 なお、農林水産省では、輸入が完全に途絶するような自体になった場合にも、いも類など熱量効率の高い作物への生産転換等を行うことによって、国内生産のみで1人1日当たり2,000kcal程度の供給が可能であると試算しています。この1人1日当たり2,000kcalというのは、戦後の深刻な食糧難を脱したといわれる昭和20年代後半の供給熱量とほぼ同様の水準だということです。ちなみにこれは農地面積450万haで試算しています。この1人1日当たり2,000kcaという食事メニューの例をみますと、このような感じです。
  朝食:ご飯茶碗1杯・蒸かしいも2個・ぬか漬け1皿
  昼食:焼きいも2本・蒸かしいも1個・果物(リンゴ1/4相当)
  夕食:ご飯茶碗1杯・焼きいも1本・焼き魚1切
これに加えてて、
  うどん2日に1杯
  みそ汁2日に1杯
  納豆3日に2パック
  牛乳6日にコップ1杯
  たまご7日に1個
  肉9日に1食
というメニューになるようです。

2.自給率の推移

 総合食料自給率は昭和40年頃には70%以上(カロリーベース)ありましたが、年を追うごとに徐々に下げ、昭和60年頃には50%台前半となり、ここ10年近くはおよそ40%と横ばいになっています。
 自給率が下がった理由としては様々言われております。食の多様化や外食頻度の増加によって小麦や畜産物の需要が増え、日本食離れが進んだこと。競争力のある安い輸入食料が入ってきたことで国産食料がシェアを落としたこと。そのため生産者の離農が進み、それがさらに生産の減少につながっていること。従来よりも高カロリー食になり、一人当たりの摂取熱量が大きくなって需要が増大したこと。食べ残し、売れ残りなど無駄になる食料が多くなり、見かけの需要が大きくなったことなどがあげられます。
 もうひとつ、これはあまり指摘されませんが、人口が増加したことで需要が増えたことも影響していると考えられます。昭和40年度の総合自給率はカロリーベースで73%ですが、この時の人口は9,920万人。これを人口12,777万人として換算しますと自給率は57%になります。同じく、昭和60年度の総合自給率は53%ですが、人口は12,105万人。人口12,777万人に換算しますと自給率は50%になります。もちろん人口をそろえたとしてもそれ以上に自給率が落ち込んでいるわけなので、人口増加が全てではありません。まぁ、昭和40年から昭和60年にかけての自給率の低下には、人口の増加も一定の影響を与えていたのだろうと思われますが、とくに平成以降の自給率の落ち込みについては、人口増加による影響というよりは前述した様々な影響のほうが大きいでしょう。

3.品目ごとの自給率

農林水産省発行
日本の食糧自給率
食糧需給表
を見てみましょう。

これを表にまとめてみました。

表1 国内生産量・国内消費仕向量・品目別自給率の推移

年度
昭和40年度
昭和60年度
平成17年度
人口(人)
99,209,000
121,049,000
127,768,000
項目国内生産量国内消費
仕向量リョウ
品目自給率
重量ベース
国内生産量国内消費
仕向量リョウ
品目自給率
重量ベース
国内生産量国内消費
仕向量リョウ
品目自給率
重量ベース
品目自給率
カロリーベース
(単位)
1,000t
1,000t
%
1,000t
1,000t
%
1,000t
1,000t
%
%
12,40912,9939611,66210,8491078,9989,2229898
小麦1,2874,631288746,101148756,2131414
豆類6462,623254245,52083524,78277
いも類4,0564,0441003,7273,927952,7493,5557777
野菜13,48313,50910016,60717,4729512,47715,8347979
果実1,5712,136742,3464,202561,7576,3642828
牛乳・乳製品3,2713,815867,4368,785858,29212,1456828
牛肉19620795556774724971,1514312
豚肉4314311001,5591,813861,2422,494506
鶏肉238246971,3541,466921,2931,919677
鶏卵1,3301,3321002,1602,199982,4622,6129410
魚介類6,5026,47710011,46412,263935,10610,2675050
海草類819288142193741231836767
砂糖類  31  33  3434
油脂類766921832,2862,394322,0372,9951313
きのこ類60521152872821024175257979
粗飼料4,5194,5191005,3106,242854,1975,4857777
濃厚飼料2,7718,840312,18722,275102,21419,6781111
総合自給率(%)
カロリーベース
  73  53   40
 注:平成17年度の、牛乳・乳製品の飼料自給率41%、牛肉の飼料自給率28%、豚肉の飼料自給率11%、鶏肉・鶏卵の飼料自給率11%として計算


ここでは、昭和40年度と、昭和60年度、そして平成17年度を比較しています。
昭和40年度は炭水化物が突出しており、蛋白質と脂質が不足気味。昭和60年度は丁度栄養のバランスがとれていたとされる時期で、平成17年になりますと、蛋白質と脂質が過剰になり、生活習慣病、メタボリックシンドロームが指摘されるようになった時期です。

■米
 米の国内消費仕向量は減っています。生産量も減っており、自給率は現在も100%近くを保っています。これは米の消費が減って、それに合わせて生産量も減っている、米の作付けが減っていることを表していると考えられます。
■小麦
 小麦の生産量は昭和40年当時よりも32%減っています。一方で消費は34%増えており、そのため自給率は28%から14%まで落ち込んでいます。食生活の小麦化(パン、ハンバーガー、うどん、パスタ、インスタント食品、菓子、スナック類等)が進んだことを反映して消費は伸びているものの、その伸びはは安い外国産の小麦が大量に入ったためであり、国内の小麦生産は打撃を受け縮小していることを物語っていると考えられます。
■豆類
 豆類も小麦と同様の傾向がうかがえます。消費は増えているのに生産は減って、自給率は下がっている。外国産の大豆に圧倒されているのだろうと思います。しかし自給率が7%なのに、スーパーで納豆のパックを見ると軒並み「国産大豆使用」となっているのは何でしょう?
■いも類
 いも類は消費が落ちていますが、それ以上に生産が落ちて、自給率が下がっています。いも類は完全国産化ができる貴重はカロリー源でもあるので、守っていきたいところです。
■野菜
 昭和60年に比べ、野菜は消費が落ちています。輸入が増えたこともあって自給率が下がっていますが、野菜の輸入が可能になったのは鮮度を保つための流通技術が発達したことで可能になったのでしょう。しかし、ここにはエネルギーが投入されているわけです。そしてエネルギーを使って運んでくる。中国産食品の安全性が取りざたされましたが、輸入食材は安全性の視点からだけではなく、エネルギー問題からも考えたいものです。完全国産化できる野菜なのに石油を使って鮮度を保ち運んでくるのはいかがなものでしょう。
■果実
 くだものもは消費が伸びています。国内生産は昭和40年当時よりは伸びていますが、昭和60年よりは後退しており、様々な輸入果物が入ってきていて、自給率は28%に落ち込んでいます。国内の生産者は多様性や高級志向に合わせて、付加価値のある生産に苦慮しているのだろうと思います。ここにも野菜と同じような問題が絡んでいると考えられます。

 さて、畜産物についてですが、畜産物の自給率には飼料の自給率のことも考えなければなりません。家畜飼料には、大きく分けて粗飼料と濃厚飼料があるのだそうです。粗飼料とは乾草・稲藁などで、これは自給率77%(平成17年度)。主に牛や羊の飼料として使われます。一方、濃厚飼料とはトウモロコシ・大麦などで構成され、自給率は11%(平成17年度)。豚や鶏はもっぱらこちらの飼料で飼育されます。

■牛乳・乳製品
 生産量、消費量共に伸びています。牛乳やチーズをそのまま食べるほかに、さまざまな形で料理に使われるので、食の多様化を反映しているのでしょう。国内生産量は消費の68%と、健闘しているのですが、牛乳・乳製品用飼料(粗飼料)の自給率は41%であるため、カロリーベースでは28%となっています。
■牛肉
 牛肉は、昔は自給率の高い食料でした。消費はたいへん伸びており、昭和40年と比較すると実に5倍。生産のほうはというと昭和40年当時と比べると2.5倍になってはいますが、牛肉の輸入自由化が実施される以前の昭和62年よりは減少しており、牛肉消費の伸びは輸入牛肉の増加を示しているものと考えられます。現在の国内生産は重量ベースで43%。飼料の自給率が28%なので、カロリーベースでは12%となっています。
■豚肉
 豚肉の消費は伸びており、昭和40年当時の6倍ほどに達します。豚肉は昭和60年頃まではほとんど国内で生産されていました。それでも飼料(濃厚飼料)の自給率低いので、品目自給率では1割弱になるのですが。ところが、国内生産は昭和60年よりも減少し、平成17年には国内生産が50%まで落ち込んでいます。濃厚飼料の自給率は11%程度なので、品目自給率は6%! 日本国内で消費される豚肉の94%は海外に依存していると言えます。
■鶏肉 ■鶏卵
 鶏肉、鶏卵の消費も伸びています。国内生産はそれぞれ67%、94%と高いのですが、これも濃厚飼料の自給率が低いので、9割以上海外に依存している状況です。
■魚介類
 魚介類の消費は少々落ています。しかし生産はそれ以上に落ち込んでいます。消費の減退については消費者の魚離れの傾向がうかがえるようです。魚介類の自給率は100%が当たり前でした。それが今では自給率50%。これも野菜などと同じように、冷凍技術などの流通技術が発達したために、世界一の市場である日本を舞台に世界中の漁業企業と競合するようになったことが関係しているのではないかと思われます。しかしこれも、石油を使って冷凍し、石油を使って運んでくるわけです。その上「日本人が世界中の魚を食べ尽くす」なんて言われたり、日本の漁業が衰退したりするわけで、なんだか踏んだり蹴ったりという感があります。
■海草類
 海草類の自給率は下がっています。これは韓国、中国など、近隣諸国からの輸入が増えているためでしょう。国内産にしろ外国産にしろ、海草類の場合は沿岸汚染のことが気に掛かるところです。
■油脂類
 油脂の生産はほとんどが国内です。しかし油脂のもとになる大豆などがほとんど輸入に頼っているので、油脂類のエネルギーベース品目自給率は13%と低い値になっています。

4.自給率からみえてくるもの

 品目別自給率で苦戦している分野、というより完全にやられてしまった分野は、小麦(14%)、豆類(7%)、牛肉(12%)、豚肉(6%)、鶏肉(8%)、鶏卵(11%)、油脂(13%)です。このうち畜産類の自給率が低い理由は、そもそも濃厚飼料の自給率が11%と低いためです。この濃厚飼料というのがトウモロコシ・大豆絞りかす・大麦などであること、また油脂類の自給率の低さも輸入大豆、コーンなどを原料としているためであることを考えますと、小麦・大麦、トウモロコシ、大豆といった“乾物”に関わる分野が軒並み外国に依存していることがわかります。さて、これら小麦・トウモロコシ、大豆を大量に生産し輸出している国はどこでしょう。そして、小麦、トウモロコシ、大豆は値を上げています。バイオエタノールショックです。これらの食料を一手に握っているのはどこでしょう。

 自給率が下がっている分野のもう一つは、野菜、魚介類といった分野です。先述した乾物は輸送が容易なので早くから長距離流通が可能でした。野菜や魚介類は生鮮保存技術、冷凍技術などの発達により、ここにきて日本の市場がグローバルな競争の場になったこといえましょう。日本人の食に対する嗜好、好奇心、探求心は旺盛ですから、食に関して日本市場は魅力的です。

 よく「消費者のため」「消費者は安い食料を求めている」といいます。そりゃぁもちろん消費者にしてみれば安い方がいいに決まっています。しかしここでよく考えてみなければなりません。甘言を弄して依存せしめ、自立の能力を奪い、あとは隷属させ搾取する。これは世の中のいたる所にみられることです。英語の「depend」と「independ」の間には常にせめぎ合いがあるのではないでしょうか。

5.外国産の食料はなぜ安い。

 そもそもなぜ海外の食料が安価に入ってくるのでしょうか。よく、大規模化されていて単価が安くできるから競争力があるのだとか、日本は人件費が高いからとかいう説明を聞きますが、なにせわざわざ運送費をかけて運んでくるわけなのですから。

 そのからくりは、アメリカの農業も実は補助金やら価格保証やらで保護されており、穀物メジャーが農作物を生産価格より安いダンピング価格で輸出する際にも補助金が使われているのだそうです。アメリカは対外的には「自由な競争」を掲げますが、片方では自国農業を保護し、チカラワザで農作物の価格を下げて輸出競争力を高めているのです。

 もう一つは、国内輸送の燃料代には税金がかかっているのに、国境を越える輸送にはその燃料代に税金が掛からないので安く運んでこれるからなのだそうです。これはグローバル化という名の下に、世界中にものを売りたい人たち(その中には日本の輸出企業も含まれます)が、安く売るのに都合のいいように決まりを作っているためです。その安さはもちろん慈善事業としてやっているわけではありません。安い方が競争力があって相手市場を支配しやすいからですね。その上FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)が締結されればどうでしょう。

 ところで、日本の農家はJA共済に貯蓄しますが、そのお金は農林中金に集められ、世界銀行債の購入に充てられることで、世界銀行にながれています。世界銀行は農産物の貿易自由化を推進しているのですから、日本の農家はせっせと貯めたお金で自分たちが追い詰められるという構造になっていることになります。なんともやりきれないことです。これは未来バンクの田中優さんの本の受け売りです。田中さんの考え方は大変興味深く示唆に富んでいるので、読者の皆様もぜひご覧になってみて下さい。

田中優の「もうひとつの未来」-分散型社会に向けて

 第9回 地域発の金融ビッグバンを

 地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか.田中優.扶桑社新書,2007




6.ライフラインは安全か

 それでは、アメリカの農業はそんなにも強力なのかというと、これが実はあやしい。大規模な灌漑のために地下水が枯渇してアメリカの農地は生産を支えられなくなっているらしいのです。オーストラリアだって、ここ数年続く干魃のため小麦の生産が激減しているそうで、今年も干魃ならもはや輸出に回せる小麦はないという話も聞きます。輸入食料に依存している(させられている)日本はどうしましょう。

 日本のエネルギーのライフラインは南シナ海からインド洋を通ってペルシア湾に通じています。一方、食料のライフラインは太平洋を渡ってアメリカ(とオーストラリア)に続いています。そしてともにそのバルブはこちら側ではなく、向こう側にあるのです。本来、外国との取引は何かとのバーターであるべきで、向こうにとって必要なものをこちらが供給できる必要があります。(米国市場でものを売らせてもらうには、一方的に売るだけではなく、応分のメリットを相手に提供すべきなのは理解できますが、それで国内の食料自給能力を壊滅させてしまったのでは割に合わないです)もちろん直接にはお金を払って食料やエネルギーを買っているわけですが、お金があれば買えるというほど簡単なものではありません。世の中にはいくらお金があっても売ってもらえないこともあるのですから。それにそのお金、本当にあるんでしょうか? 自前でまかなえる分を拡大し、依存の割合を少なくする努力をしつつ、相手国に対して日本はいったい何を提供できるのかということを考えねばなりません。

 日本の食料生産はたいへん困難な状況にあります。外国、特にアメリカに依存している部分が非常に大きく、日本の食料はアメリカに握られているといってもいいような状態です。アメリカが日本の国内市場で農産物を売りたいというだけでなく、日本の中にも外国にものを売りたいがために日本の農業を人身御供に差し出しているような人や、外国のものを国内に売って利益にあずかりたいがために門を開いて引き入れようとする人がいるように見えます。
 それに加えて石油の問題もあります。現在の農業に石油は必須です。石油が入らなければトラクターや田植機やコンバインを動かすことも、ハウスの照明・温度管理も、軽トラックで出荷することもできません。日本の食料は、かたや外国からの輸入に依存し、もう片方では、国内生産も石油の輸入に依存しているという構造になっています。そんな中で、どのように自給率を高めてゆくことができるでしょうか。

7.自給率を高めるために

 自給率は簡単にいえば、供給と需要のバランスです。
[供給]が多ければ自給率は高くなります。[需要]が少なくなれば自給率は高くなるます。さらにいえば、[供給]と[需要]がうまくかみ合うことが必要になります。日本の食が自立するためには、供給側、需要側双方に対策が必要であるといえましょう。

 [供給]を増やすためには生産を高めなくてはなりません。とはいっても農業は年間事業ですので、来月足りなくなりそうだからといって来月まで増やせるわけではありません。生産刺激策をとったとしても、即効性があるというわけではないでしょう。政府には目先の利益に誘導されず、長期的な視野に立った国家戦略をお願いしたいところです。私たち消費者ができることは、国産食品を愛好してゆくことで[供給]を喚起してゆくといったことでしょうか。

 [需要]を少なくすることは、私たち消費者にかかっています。無駄を省いて、食べ物を大事にする。食べ過ぎは控えるということが求められます。ところで、縁起のよい話しではありませんが、かつての“口減らし”は[需要]の調整であったわけです。今後、少子化などで人口減少に転じれば、これもまた[需要]の減少につながります。しかしその時に自給能力を高めようとする取り組みがなければ、生産も先細って、結局は海外依存を高めることにもなりかねません。

 [供給]と[需要]がかみ合うようにするということは、国情にあわせて、[供給]側にあっては小麦、大豆など足りないところの生産を増やし、[需要]側にあっては米食を増やして、肉食を控えるようこころがけて、需給の最適化を図ることが求められます。しかし現状の中で小麦や大豆の生産を増やすというのはなかなか難儀なことだと思います。

8.日本の食料生産能力

 日本の国土、耕地はどの程度食料を生産することができるのでしょう。各品目において、国内生産が最高だった年度の生産量を見てみましょう。前にも申しましたとおり、畜産物は飼料の自給率を考慮に入れなければなりませんから、ひいき目に見積もって、牛乳・乳製品向け飼料80%、牛肉向け飼料50%、豚肉・鶏肉・鶏卵向け資料20%という自給率を想定しますと、各品目国内生産の最大量は過去の実績から、米14,453千t(S42)、小麦1,781千t(S36)、豆類919千t(S35)、いも類4,073千t(S61)、野菜16,992千t(S57)、果実2,495千t(S58)、牛乳・乳製品8,659千t(H8)、牛肉605千t(H6)、豚肉1,597千t(H1)、鶏肉1,437千t(S62)、鶏卵2,601千t(H5)、魚介類12,055千t(S59)、海草類160千t(S63)、油脂類2,426千t(S63)、きのこ類417千t(H17)と見積もることができます。実際にはそれぞれ競合するところもあるでしょうから、ひいき目に見てということになりますが、まぁこれを希望的観測に基づく日本の潜在的な食料生産能力としましょう。

 さて、これはどれほどの供給能力なのでしょうか。この国内生産量を1人1日当たり供給熱量に換算すると、およそ1,700kcalとなります。これは平成17年度の1人1日当たりの供給熱量2,573kcalの66%、軽作業に従事する成人男性の必要熱量2,200kcalの77%にあたります。品目別に見ますと、米は現在の1.5倍、小麦は3/10、豆類は1/5、いも類は1.2倍、野菜は現在と同量。果実は2/5、牛乳・乳製品は2/5、牛肉・豚肉・鶏肉はそれぞれ現在の1/10、鶏卵は1/5、魚介類は1.2倍という供給量になります。

 平成17年度の1人1日当たりの供給熱量2,573kcalの66%といえば、12,766万人のうち約8,000万人分の熱量に相当することになりますし、2,200kcalの77%といえば、約1億人分の熱量に相当すると考えますと、過去の実績からの最大値を見積もっても国内生産だけで現在の人口はまかなうことは難しく、またその場合にも米や魚を多く、小麦や肉類をぐっと少なくする必要があるといえます。

9.国土の力

農林水産省発行「我が国の食料自給率-平成17年度 食料自給率レポート-
の中の、「図Ⅱ-8 各国国民1人当たりの農地面積の比較」から作成しました、

表2 各国の国民1人当たりの農地面積の比較

  日本ドイツイタリアイギリスフランスアメリカカナダオーストラリア
A :人口
(万人)
12,7808,2505,7605,9605,98029,0803,1601,990
B :自給率(カロリーベース)
(%)
40846270122128145237
C :1人当アたりの農地面積
(坪)
1116247928611,5024,2586,46266,810
D :A×B
(万人)
5,1126,9303,5714,1727,29637,2224,5824,716
E :A×C(総農地ノウチ面積)
(億坪)
14251545651389812,3822,04213,295
F :D/E
(人/万坪ツボ)
36.013.57.88.18.13.02.20.4


 中国やインドの人口は別格としても、そもそも日本の人口は世界的にも多い方で、ドイツの1.5倍、イギリス・フランスの2倍以上の人口を抱えています。自給率145%のカナダは人口3,160万、自給率235%のオーストラリアは人口1,990万人ということと比較しますと、日本の人口規模の巨大さがわかります。日本の自給率40%というのは先進国の中でも際だって少なく、また1人当たりの農地面積も総農地面積も、歴然と狭いのです。

 ですが、人口×自給率(カロリーベース)を算出してみますと驚くべきことがわかります。あらっぽいことではありますがこれを「何人分の熱量を自給できているか」という指標として考えてみましょう。そうしますと、日本は5,112万人分の熱量を供給できているということができます。これは狭い総農地面積から考えますと相当に健闘していると言えます。さらに単位面積当たりに換算しますと、1万坪あたり36人分の熱量を供給していることになり、他の国の熱量供給と比較しますと驚異的ともいえます。実にオーストラリアの90倍の熱量供給効率。豊葦原の瑞穂の国の賜物といえましょう。日本の国土はこれほどがんばっているのですが、いかんせん1億3千万弱の人口を養うには厳しいようで、そこに外交努力によって食料を確保する必要があります。

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