2009年4月8日水曜日

やさしい「戦闘教義」講座 5 無形化戦争

無形化戦争

無形化世界については物理数学者の長沼伸一郎氏『無形化世界の力学と戦略』をお読みいただけるとよいのですが、こちら Nihonist Academy さんのサイトがよくまとまっております。

無形化世界とは何か

現代では形のある物理的な軍事力のようなパワーが主役の座を降り,経済力をはじめとする無形化したパワーが世界を動かす主役となった。そして現代では時を経るごとにコンピューターの中の数字が一種の仮想的な現実として力を強め,物質そのものを圧倒し始めている。[無形化世界の力学と戦略

第二次世界大戦以後の世界情勢は,東西陣営による核ミサイル軍拡競争による恐怖の均衡によって,直接的に軍事力を使用する有形の戦争は減少した。核兵器というジョーカーによる通常兵器の無力化である。これがパワーの無形化である。そして,無力化された通常兵器に取って代わるものとして,新たにパワーとして頭角を現して来たのが
(i)   国家・企業間での通貨戦争や貿易戦争などの経済戦争,
(ii)  大学・シンクタンクなど知的機関による学問領域における正統性争い・覇権争い,
(iii) TVや新聞,報道機関などメディアを通じた報道戦争・イデオロギー戦争である。
これらの争いでは,軍事力を行使しないため,「見えざる戦争=無形化世界における戦争」である。大規模戦争が勃発しなくなった昨今では,これらの無形化世界における戦争こそが重要なのであり,その可視化と定量化,そして無形化世界での戦略を構築すべきというのが長沼氏の意見である。

長沼氏は「経済活動は相手に打撃を与え、こちらの意志の下に相手を服従せしめる力を持っており、これはまさに目に見えない戦争「経済戦争」「無形化戦争」なのである」と言って、経済活動の「無形化戦争」としての側面を指摘しました。しかしこちらの意志の下に相手を服従せしめるのは、なにも経済活動ばかりとは限りません。長沼氏も経済の領域以外に学術研究の領域、報道メディアの領域もまた無形化戦争という側面がある旨を指摘しています。「無形化戦争」とは、物質世界の有形戦争という形をとらずに相手をこちらの意志の下に服従せしめんとする互いの攻防をいう、と定義づけられるのではないでしょうか。すると経済戦だけでなく外交戦、情報戦、洗脳戦を含んで「無形化戦争」であり、近年ではインターネットなど情報空間上の活動もまた「無形化戦争」といえましょう。もちろん経済活動は「無形化戦争」の重要な一部分です。

ところで「相手をこちらの意志の下に服従せしめる」といえば人聞きが悪いですが、これもまた様々な様相があります。もちろん相手が屈辱にまみれながら不承不承屈服することもあるでしょう。また相手に感服して潔く負けを認めることもあります。場合によっては、それと気付かずに相手の意志どおりに従っていることもあります。あるいは喜んで相手の意志に沿おうと努めることもあります。十分納得し承知して相手の意志を受け入れることもあります。勝ち負けと表現するような関係ではなく、両者満足という「win and win」の関係もありますね。そうなるとこれは「戦争」というより「交渉」と呼ぶべきものです。もともと「戦争とは他の手段をもってする政治の継続(クラウゼビッツ)」なので、無形化戦争となればなおさらそれは交渉や説得、調略、誘惑などと一続きのスペクトラムといえましょう。そしてこれらは「交換(等価とは限らない)」の一形態でありますから、無形化戦争は交換(コミュニケーション)の一環と考えられます。そこで用いられる手段としての媒体は交換媒体(コミュニケーション・メディア)であり、コミュニケーション・メディアには「通貨(財力)」「言語(智力)」「暴力(武力)」がありますから、無形化戦争においてもまた、これらがパワーの源泉となります。

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