2009年4月19日日曜日

バイオディーゼル燃料を学ぶ 2 (2007/07/10)

今回はバイオディーゼル燃料に話しを進めたいと思います。

バイオディーゼルとは

 バイオディーゼル燃料とは、生物由来(魚脂、動物油脂も含むが多くの場合は植物由来)の油脂を原料として作られ、ディーゼルエンジンを稼働させることができる燃料の総称です。英語表記では「biodiesel fuel」と記します。日本ではその頭文字をとった「BDF]という表記もよく使われますが、これは廃食用油から軽油代替燃料を精製するという先駆的な取り組みをおこなったある企業の登録商標なのだそうです。それが一般化して日本ではBDFと使うことが多いらしいのですが、そのあたりのいきさつは私にはわかりません。
  以下に、バイオディーゼル燃料に関連した簡単な用語集を記します。

バイオディーゼル燃料関連用語

【軽油】 原油の蒸留によって得られる石油製品。沸点範囲が180~350℃程度の様々な炭化水素の混合物で、主にディーゼルエンジンの燃料として使われる。
【バイオディーゼル燃料】 生物由来の油脂を原料として作られ、ディーゼルエンジンを稼働させることができる燃料の総称。
【 BDF 】 登録商標。廃食用油から精製した軽油代替燃料。東京のある油商の登録商標だが、一般化し、バイオディーゼル燃料の略称として広く使われている。同社の登録商標としては「VDF」(vegitable diesel fuelの頭文字)もある。
【 FAME 】 Fatty Acid MethylEster(脂肪酸メチルエステル)の略称。脂肪酸をメチルエステル化して得られるバイオディーゼル燃料の総称。
【 RME 】 RapeSeed (oil) MethylEster の略称。菜種油をメチルエステル化したバイオディーゼル燃料。ヨーロッパで広く使用されているバイオディーゼル燃料の一つ。
【 SME 】 SoyBean (oil) MethylEster の略称。大豆油をメチルエステル化したバイオディーゼル燃料。米国で使用されている。
【B5,B20,B100】 軽油中に混合されるバイオディーゼル燃料の割合で、5%混合ならB5,20%混合ならB20,バイオディーゼル燃料100%ならB100と言い習わす。
【Neat(ニート)】 軽油と混合しない100%バイオディーゼル燃料の意。「ニートFAME」
【 BHD 】 Bio Hydrofined Diesel の略称。生物由来油脂を触媒反応で水素添加した次世代バイオディーゼル燃料。
【 SVO 】 Straight Vegetable Oil の略称。燃料ヒーターで燃料を加熱し粘度を下げることで、植物油をそのまま軽油代替燃料として使用する方法。
【セタン価(Cetane number)】 ディーゼルエンジン内でディーゼルノックの起こりにくさを示す数値であり、軽油の着火性を表す値。セタン価が高いほど自己着火しやすく、ディーゼルノックが起こりにくい。

 ここでひとつご注意いただきたいのは、バイオディーゼル燃料は軽油と同一の化学物質ではないということです。軽油もバイオディーゼル燃料もディーゼルエンジンを稼働させることのできる燃料ですが、植物油を処理すれば軽油になるわけではありません。軽油とバイオディーゼル燃料にはその物性に違いがあるので、軽油の使用を前提としたディーゼルエンジンにバイオディーゼル燃料を使用する際には注意が必要になります。これは後に触れたいと思います。

バイオディーゼル燃料の歴史

 次にバイオディーゼル燃料の歴史についてざっと眺めてみたいと思います。そもそもディーゼル機関が発明された当初から植物油の使用が考えられていたようです。しかし、軽油が安価に入手できるようになったために、軽油での使用が一般化していきました。

1892年 ルドルフ・ディーゼル、ディーゼル機関を発明。
1900年 ルドルフ・ディーゼル、パリ万国博覧会にてピーナッツ油での運転を実演。
1936年 メルセデスベンツ、ディーゼル乗用車を開発。
1973年 オーストリア、石油危機を機にディーゼル燃料として植物油の使用を検討。
1980年 オーストリア農業協同組合、バイオディーゼル燃料の生産開始。
1981年 南アフリカ、人種差別政策に対する国際制裁により石油不足。
     それを機に、運送業界でバイオディーゼルを実用化。
1982年 オーストリア、バイオディーゼル燃料の実用化。
1982年 マレーシア、パーム油製バイオディーゼル燃料の研究。
1991年 オーストリア規格協会、世界初のバイオディーゼル燃料規格。商業生産開始。
     次いで、フランス、ドイツ、チェコなどでも品質基準を発表。
1996年 米国、余剰大豆油の利活用としてバイオディーゼル燃料に着目。
     全米大豆開発協会設立。後に全米バイオディーゼル協会に発展。

 欧州では1980年代から菜種油を原料としたバイオディーゼル燃料が実用化されました。1990年代前半には燃料品質の規格化もなされて、また、税控除などの優遇措置を導入して、今日広く普及しております。2007年にはドイツだけでも300万トン以上のRMEを生産するという予測もあるほどです。
  アメリカではもともと家畜飼料として大豆をしぼった大豆ミールを生産しており、その副産物として大豆油が大量に余っていました。その余剰大豆の利活用というところから大豆油バイオディーゼル燃料が始まったようです。
  東南アジアでも、EUや日本、韓国などの市場を見込んで、マレーシア、インドネシアではパーム油、フィリピンではココナツ油によるバイオディーゼル燃料の開発が促進されています。しかし一方では、エネルギー作物の作付けが拡大することで熱帯雨林の破壊が懸念されるという事態もあるようです。
  欧州に比べると生産も普及もまだまだ遅れてはいますが、我が国でも地道にバイオディーゼルへの取り組んでいるところがあります。

1980年 滋賀県、廃食用油を回収し石けん製造する運動。 
1993年 東京の油商、植物油から軽油代替燃料を製造。自社車両に使用。
1994年 滋賀県愛東町(現東近江市)にバイオディーゼル燃料テストプラント設置。
1996年 京都市、バイオディーゼル燃料化事業に着手。
1997年 京都市、ごみ収集車約220台に100%バイオディーゼル燃料を使用。
1998年 愛東町、地域自立資源循環社会を目指す「菜の花プロジェクト」をスタート。
2000年 京都市、市バス約80台に20%バイオディーゼル燃料を使用。
2001年 滋賀県新旭町(現高島市)で、「菜の花サミット2001」を開催。
2001年 「地球温暖化防止京都会議(COP3)」開催。
2001年 滋賀県、環境学習船に10%バイオディーゼル燃料を使用。
2001年 静岡県トラック協会、排ガス対策としてバイオディーゼル燃料を検討。
     菜の花の栽培委託買取を実施し、トラック走行試験を重ねる。
2004年 滋賀県の交通会社、路線バスにバイオディーゼル燃料を使用。
2005年 京都議定書発効。1990年度に比しCO2を6%削減することが日本の国際義務。
2006年 経済産業省、日本のバイオディーゼル関連の規格案を公開。
2006年 社団法人自動車技術会、混合用脂肪酸メチルエステル(FAME)の規格を制定。
2007年 FAMEを軽油と一定割合で混合するための規格化に係る法改正。

 日本でのバイオディーゼルの歴史にはいくつかの流れがあります。一つには、廃油の回収処理からリサイクル燃料を作るという意欲的な取り組みをした企業。また一つには、琵琶湖の水質浄化運動からスタートし、回収廃食用油から石けんを作り、さらにその廃食用油を利用してバイオディーゼルを生産して、地域自立資源循環の運動へと発展した滋賀県モデル。そして京都議定書の"お膝元"である京都市の環境への取り組みなどが大きな流れになっているようです。
  その他の自治体でもゴミ収集車やバスなどの公共交通機関に利用しようという動きが見られるようになっております。しかし全国的に見ますと、一部を除いては有志グループが試行を重ねているといった段階で、まだまだ生産能力も流通体制も市場も小さなものです。
  今年3月、バイオディーゼル燃料を軽油と一定割合(5%)混合し販売する際の規格に関する法改正が行われ、バイオディーゼル燃料混合形油(B5)を商業販売してゆく下地ができました。

 と、簡単ではありますが、以上が世界と日本のバイオディーゼルの流れです。欧州ではバイオディーゼル燃料はかなり普及しております。というもの、そもそも欧州ではディーゼルエンジン車のシェアが大きいためで、近年では新車登録台数に占めるディーゼルエンジン車の割合が全体の半分以上だとのことです。そのためバイオディーゼル燃料の生産量も多いのですが需要も大きく、まだ不足気味だといいます。そこにアフリカやアジア産のバイオディーゼル燃料の輸入という動きも出てくるわけです。しかし、熱帯雨林を伐採したプランテーション由来のバイオディーゼル燃料を導入するのは逆効果ではないか。菜種の作付けを増やし生産を拡大しても、化石燃料を使ってエネルギー作物を大量に作ることがはたして効果的なことなのか。本当にバイオ燃料はエネルギー問題の解決になりうるのかなど、冷静な議論もあって、欧州のバイオディーゼル燃料への意識は単なる普及段階から、一段進んだ成熟段階に来ているようです。


 ここで、少し話題はそれますが、最近印象に残ったことをお話しいたしましょう。
  6月10日、信濃毎日新聞に解剖学者である養老孟司氏の寄稿が掲載されました。氏の自然に対する思想は共感するところ大なのですが、このたびもたいへん同意させられるものでした。以下に一部引用させていただきご紹介したいと思います。

とはいえ私は、温暖化問題を政治問題にすべきではないと思っている。ブッシュ政権のように、言論を統制するのも論外である。なぜなら温暖化問題は人類全体の問題であり、だれかに都合が悪いからといって、事実を隠したりねじ曲げたりすべき性質のことではないからである。

(中略)

日本が一人頭で50年までに半減可能かというなら、私は可能だと思っている。しかし日本だけでは意味がない。これこそまさに国際問題なのである。

(中略)

この問題の根本はアメリカ文明だということは明白である。アメリカほど石油に強く依存している文明はない。石油に限らない。高エネルギー消費文明といってもいいであろう。それを主として支えたのが石油だった。その石油が2面から終焉が見えてきた。一つは実際に石油がなくなるという埋蔵量問題であり、もう一つが二酸化炭素による温暖化問題である。この二つをどう解決するか、大げさにいうなら、そこに現代文明の未来がかかっている。

ここで代替エネルギーを考える人もあろう。十分に論じる余裕がないが、それはダメだと考えている。代替エネルギーが現実にないというだけではない。もはや高エネルギー消費文明を許すべきではない。私はそう思っている。なぜなら、エネルギー消費は、結局は人間の質を落とすからである。つい人は「やすきにつく」からである。


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