2009年4月25日土曜日

【映画】 All The King's Men (2008/09/30)

Humpty Dumpty sat on a wall. 
Humpty Dumpty had a great fall. 
All the king's horses and all the king's men 
couldn't put Humpty together again. 

ハンプティ・ダンプティが 塀の上
ハンプティ・ダンプティが おっこちた
王様の馬みんなと 王様の家来みんなでも
ハンプティを元に 戻せなかった


オール・ザ・キングスメン All The King's Men (1949年.アメリカ)

【あらすじ】

    腐敗政治

男は田舎の農民の出であった。貧しく無学であったが、一所懸命勉強し、教師であった妻と養子を迎えた。男は政治家、役人、企業が一緒になった腐敗政治を糾弾しつつ出納官に立候補した。新聞記者の若者が彼のことを取材するうちに彼に共感するようになる。男は、さまざまな妨害工作や嫌がらせ、脅迫を受けながら選挙活動を続けるが、結局は落選する。

    教育軽視

男は妻の指導のもと法学士(弁護士)の資格を取り、貧しい者、虐げられている者の立場に立って、州政府や事業者達を相手に戦う。そんな折り、建て替えられることなく老朽化していた小学校の階段が崩落して、数十人の子供たちが命を失うというという事故が発生した。この事故を契機に政治腐敗を糾弾していた男の行動が見直される。新聞記者の若者はそれを題材に記事を書き、それは反響を呼び、男は一躍"時の人"となる。

    選挙謀略

ちょうどその頃州知事選挙があり、二人の候補の一騎打ちとなっていた。不利な陣営は相手候補の票を割るため、ダミー候補として男に白羽の矢を立てた。何も知らず州知事候補に推薦された男は、自分の理想を叶えるチャンスと喜ぶ。しかし、有権者に現実を知ってもらい、有権者を教育しようとする男の演説は、理知的ではあるが垢抜けないために、人々は興味を引かれず盛り上がらない。密かに派遣されて男の選挙参謀に納まった女秘書は、いいかげんうんざりしており、ついうっかり口を滑らせ、男が票割りのためのデコイであることを明かしてしまう。

    大衆煽動

裏のカラクリを知った男は傷心し自棄酒を煽る。翌日の演説で、迎え酒をあおった男は、自棄になって民衆の前で全てをぶちまける。怒りに駆られた男は台本を投げ捨て、自分を担ぎ出した議員らを壇上から追放して、民衆を挑発する。自分の生い立ちを語り、虐げられている者の心に訴える。「田舎者諸君、あなた方は役人からバカにされてる!今度は我々の番だ!私はこの選挙戦に全力を尽くす!」男は熱病に取り憑かれたように民衆を煽り、「目を凝らして現実を見つめるんだ!貧しさに苦しむ、それが現実だ!貧乏人を救えるのは貧乏人だけだ!」この演説は人々の心を捕らえ、会場は一気に熱狂した。それから開き直った男はコツを掴んだように、演説で民衆に訴えかけ、民衆は男を救世主として迎えた。

    衆愚政治

結局男は落選したが、この選挙戦で男はコツをつかんだ。民衆の煽り方、そして選挙資金の作り方である。理想を叶えるには頂点に立つ必要がある。そのためには金がいる。裏から金をもらっても民衆の喜ぶことをやれば文句はないだろう。新聞記者の青年も片腕として仲間に加えた。4年後の州知事選挙で「貧者の味方」をうたって圧勝した男は、しだいに王国を作り始める。民衆を煽動し、闇社会と繋がり、賄賂をもらい、議員や役人を抱き込み、多数派工作をし、利益供与や買収で対立者を分断し、不祥事をもみ消し、反対派はスキャンダルを握って追い込み、従わない者は口を封じる。

    利権支配

素晴らしい学校、立派なスタジアム、伝統を踏みにじり次々と建設されるハコモノ。しかし、民衆の生活は一向に貧しいままだった。民衆は汚れた政治に不満を抱くが、圧倒的な男の権力の前に、愚痴をこぼすのが関の山。男を支持した民衆、男を利用しようとした州議員達、お目付役だったはずの女秘書、男の理想に共感した新聞記者の青年、あろうことかその青年の恋人、父に反抗を感じている息子、反対派の潔癖な判事、その息子の脳外科医。友人も敵も、皆が男の軍門に下る。男は全てを支配し、同時にその喪失を恐怖する......。


【解説】

この映画は、第二次世界大戦から4年後の、1949年に公開されたアメリカ映画で、その年アカデミー賞を3部門で獲得しています。製作・脚本を自ら手がけた監督のロバート・ロッセンは、その後マッカーシズム(赤狩り)に遭い、転向を強いられています。この映画も政治腐敗をテーマとしたものですし、受け取りようによっては体制批判のプロパガンダと見ることもできます。1949年といえば終戦間もない頃ですので、アメリカの暗部を描いたこの映画は占領下の日本では公開されず、日本で初公開されたのは、ロッキード事件の余韻の残る1979年でした。なんか作為的な感じもしますが。
この映画は2006年にショーン・ペンを主演にリメイクされています。こちらのほうが馴染みがあるかもしれません。

この映画の元になったのは、1947年に出版されピュリッツアー賞を受賞した、ロバート・ペン・ウォーレン原作の小説「The life of populist Southerner Willie Stark(邦題:すべての王の臣)」です。この小説は実在のモデルがあったとされ、そのモデルとはルイジアナ州知事でのちに上院議員となった、ヒューイ・ロングだといわれています。

ヒューイ・ピアース・ロング・ジュニア(Huey Pierce Long, Jr.、1893年8月30日、アメリカ合衆国ルイジアナ州ウィンフィールド - 1935年9月10日、ルイジアナ州バトンルージュ)はアメリカ合衆国の政治家。通称「キングフィッシュ」(The Kingfish)。 訪問販売員から身を起こし、弁護士になり民主党所属であり、急進的なポピュリズムで有名であった。1928年から1932年までルイジアナ州知事を務め、1932年から1935年まで上院議員であった。1932年の大統領選挙ではフランクリン・ルーズベルトの支援者だったが、のちに袂を分かち、自らが大統領になることを計画した。 1934年には"Every Man a King"というスローガンの下に、世界恐慌のために引き起こされた犯罪と貧困を抑制するために、"Share Our Wealth"と呼ばれる、所得再分配を評価する運動を作りあげた。ロングの社会改革は大きな人気を集めたが、独裁の傾向にあることを批判された。1935年9月8日、バトンルージュのルイジアナ州議会議事堂で銃弾を浴び、2日後に死亡した。 (出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

ヒューイ・ロングが州知事になった頃は、ちょうど日本では大正から昭和へと変わり(1926年)、アメリカでは空前の大繁栄をとげたところに大恐慌(1929年)が起こった頃で、世界的にはファシズムの台頭、ブロック経済など、戦争への足音が聞こえてきた時代です。なんだか世界帝国を謳歌したアメリカが金融破綻した現在と重なりますね。

ヒューイ・ロングは「Every Man a King」というスローガンを掲げました。「みんなが王様」というわけです。しかし映画化された時のタイトルは「All the King's Men」。「皆、王の僕」というのは、周りの者が皆、主人公に支配されてゆく様子を象徴しています。支配欲に支配された男は支配すること自体が目的化し、それは留まるところはありません。

ところで、タイトルの「All the King's Men」は、マザーグースの童謡「ハンプティ・ダンプティ」の一節からとったものと言われます。この「All the King's Men」という言葉は、この童謡から、「どうやっても元に戻らない」という慣用句として使われているそうです。腐敗政治を糾弾して州知事になった男が、もっとひどい腐敗政治を行う。どうしようもないという皮肉を感じます。ちなみに、「ハンプティ・ダンプティ」は「おっこちた」ということから、アメリカの俗語で「落選確実の泡沫立候補者」の意味に使われるといいます。


Humpty Dumpty sat on a wall.
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
couldn't put Humpty together again.

ハンプティ・ダンプティが 塀の上
ハンプティ・ダンプティが おっこちた
王様の馬みんなと 王様の家来みんなでも
ハンプティを元に 戻せなかった


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