2009年3月26日木曜日

テレビの未来

これまでの半世紀、テレビは家庭用エンターテイメントの王様でした。しかし近年ネットを介してのコンテンツ提供がめざましい発達をみせ、新しい時代の到来を予感させます。そんな中、テレビの未来について面白い記事を見つけましたので御紹介したいと思います。

(前略)
テレビ関係者と視聴者双方に、「今後、決められた時間に番組を視聴する機会は大きく減ると思うか」と質問。この問いに対し、視聴者側は「大きく減ると思う」「そうは思わない」と答えた方がそれぞれ半数程度だったのに対し、テレビ局側はほとんどが「そうは思わない」と回答したのだ。ちなみに、番組を生放送で見ていた視聴者への即時アンケートでは、「大きく減ると思う」が圧倒的に多かった。

決められた時間にテレビを見るというスタイルが崩れたら、CM収入を得ながら無料で放送を行うという、現在のテレビ局のビジネスモデルは根本から揺るがされる。そうなっては困るという気持ちが、このようなズレとなって現れたのだろうか。

さすがに、そこまであけっぴろげに理由を述べるのは憚られたのか、テレビ局側が「そうは思わない」理由として挙げたのは、「テレビの持つ即時性という利点は、報道やスポーツ中継に適している」「テレビ局には良質なコンテンツの制作ノウハウがある」「権利処理の複雑さやそれに伴うコストを考えると、番組を無料でネット配信するのはビジネスモデルとして成り立たない」などが代表的なものだった。裏返してみれば、彼らはネット動画では、これらの問題を克服することは難しいと考えているということになる。

上記の問題は、今後のネット動画にとって、それほど致命的な問題ではない。即時性については、ネットはテレビにそれほど遜色ないレベルに達しているし、日本全国にあまねく情報を届けるという目的を満たすには、電波で情報を飛ばす従来のテレビ放送よりも、インターネットの方がはるかに適している。だからこそ、地デジの難視聴地域対策で光ファイバーが使われているのだ。
(中略)
テレビ番組は、映像と音声で構成されている。ネット動画も同様だ。規格の違いや伝送路の違いはあっても、それは本質的なものではない。あくまで「映像と音声の集合体」であり、本来は同じもののはずなのに、テレビ局側の出席者の発言を聞いていると、少数の例外を除き、「テレビ局が作ったコンテンツ」「ネット動画のコンテンツ」を分けて考えている(あるいは分けて考えたいと思っている)ように見受けられた。おそらく、現在のテレビが持つ大きな影響力に対する誇り、そしてクオリティの高いコンテンツを作っているという自負によるものだろう。だが現在の視聴者は、特に若者になればなるほど、テレビへの依存、ある種の忠誠心は薄れてきており、どちらが面白いか、あるいはどちらが便利か、という基準で選別を行う傾向に、ますます拍車がかかっている。その現実を、テレビ局側はまだしっかりと呑み込めていないのではないか。
(後略)
(Phile-web)

テレビ業界の人たちは、従来のビジネスモデルを維持したいという思いから現実の状況を否認しているように感じます。まぁテレビ番組の中でテレビを否定するようなことは立場上言えないというのもあるでしょう。しかしハードディスクレコーダーの出現はすでに“CM飛ばし”を一般化させてしまっており、テレビCMのコスト・パフォーマンスは低下してしまっています。

こうした中、報道や番組作りにおける不正である“誤報”や“ヤラセ”などは致命傷となりかねません。そのため最近の様々なテレビにまつわる不祥事についても自浄努力をアピールしています。
 テレビ愛知(名古屋市)が別会社に制作を委託したバラエティー番組で「やらせ」があった問題で、同社は25日、常務の郡修児報道制作局長を解任するなどの社内処分を発表した。
 この問題は、1月16日に放送した番組「松井誠と井田国彦の名古屋 見世舞」で、出演者が通行人に感想を尋ねるコーナーに、通行人を装ってメーク担当の女性スタッフ2人が出演していた。視聴者の指摘で発覚した。同社は当初、「社員は関与していなかった」としたが、その後社員が収録に立ち会っていたことが判明した。
 番組はその後打ち切られ、テレビ愛知は社内に調査委員会を設置、経緯や原因を調べていた。
(産経ニュース)
 日本テレビ放送網の久保伸太郎社長は16日、報道番組「真相報道バンキシャ!」が虚偽証言に基づき岐阜県庁の裏金づくりが続いていると報道した問題で、責任をとって辞任した。久保氏は記者会見で「重大な監督指導不行き届きの責任をとりたい」と述べた。
(アサヒ・コム)
 岐阜県庁の裏金をめぐる報道番組「真相報道バンキシャ!」の誤報問題で、日本テレビは24日、取材の経緯や誤報に至った問題点、再発防止策をまとめた調査結果を公表した。
 その中で同社は、「取材の基本を忘れ、情報提供者の話を鵜呑(うの)みにして、十分な裏付け取材をしなかった」と総括。
(中略)
 同日、記者会見した前社長の久保伸太郎相談役は「(ネットでの安易な情報収集が)すべての発端だった」と述べた......
(2009年3月24日19時27分  読売新聞)
暗に「ネット情報は信用できませんよ」というメッセージのようにも見えますが、まぁ、ネットが誤報の伝言ゲームなのはその通り。

もちろんテレビ業界も生き残りに向けて努力しているようです。政府に「景気を良くしたいなら、カネをばらまいて地デジチューナーや地デジ対応テレビに買い換えさせなさい」という提言をしています。
 日本民間放送連盟(民放連)の広瀬道貞会長は、25日に開かれた自民党の「e―Japan特命委員会」(小坂憲次委員長)で、地上デジタル放送(地デジ)対応機器の普及へ向け、仮に5000万世帯に2万円のクーポン券を配布する1兆円規模の支援策を実施すれば、約7兆6000億円の経済波及効果があるとした試算結果を披露した。
 試算は民放連に委託された電通総研がアンケート結果から推計した。計1兆円のクーポン券を配布すると、対応テレビやチューナーなどの購入で約3兆8000億円の消費が発生し、工事費などへの波及効果が見込めるという。
(2009年3月25日20時14分  読売新聞)

即時性という点ではスポーツなどのイベントもの、映像美という点では紀行ものなどはやはりまだテレビならではというところがありますね。今回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)なんかは、マスコミ業界全体が全力で盛り上げに来ていました。実際決勝は素晴らしいゲームだったようです。スポーツといえば「東京マラソン」がテレビのためのお祭りになっていることには、スポーツのエンタメ化、マスコミによるスポーツの搾取という感じがして閉口しましたが。

ところで、今後デフレ対策としてリフレ政策になると貨幣価値は暴落する。相対的にすべての物価は高くなり、原油価格・エネルギー価格は高くなるが、食糧までも手に入らなくなると社会的混乱や暴動が起こりかねない。そこでそれを抑えるために安い外国産食糧を輸入し食糧価格やサービス価格は下げ、また娯楽としてデジタル多チャンネルテレビを与えて、社会的不満を吸収しようとする、という予測があります。(参考:「WBC連覇とパンとサーカス」)

外国産の安い食品とデジタル多チャンネルテレビというのも、なんともお安い「パンとサーカスだなぁ、という感が否めません。お金をかけずに楽しいことは、別にテレビだけではありません。運動する。遠足をする。物を作る。絵を描く。俳句を作る。お喋りをする。それに勉強して知識を得る。消費以外にも楽しいことは沢山あります。昔からそうやって来ましたから。

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