2008年11月2日日曜日

地産地消

自給自足が可能なら、それで特に差し障りはありませんが、それでは不足するものがあることがあります。あるいは、自分で消費するには多すぎて、そのままではただ腐らせてしまうことがあります。

自分が所有していないものを、他者が所有しているとき、それを手に入れたいと羨む欲動を羨望(envy)といいます。「あの子のバックいいなぁ」ということですね。ちなみに、これに対して、自分が享受していない関係を、他者が享受しているとき、その関係を自分が取って代わりたいと妬む情動を嫉妬(jealousy)といいます。「あの子が彼と付き合ってるなんて許せない」というヤツです。つまり、羨望は所属性、嫉妬は関係性に関して、他者の要素を我が物にしたいと求める心理といえましょう。

さて、他者がそれを所有していて、自分がそれを持たず、しかしそれが欲しいと願う場合、どうしますか。単に所有欲を満たすというにとどまらず、それを手に入れるほうが生存の可能性が高まる場合、あるいはそれを手に入れなければ生存の危機であるという場合であれば、なおのこと必死となりましょう。なんといっても「必」「死」なのですから。

そこで、それを得るための行動を起こします。

一つには、暴力です。力ずくで奪う方法です。これは返り討ちにあうリスクや負傷を負うリスクを伴います。一度は成功しても、次からは警戒され、効率が悪くなる可能性もあります。そこで、他の暴力から守るという交換のもとで一定の利益を得るという申し合わせが生じることもあるでしょう。これが権力となり、洗練されて法規となり、租税となっていきます。

一つには交渉です。相手にをれを恵んでくれるよう、お願いし説得するという方法があります。相手が求む物をこちらが所有していれば、交換するという形で手に入れることができるかもしれません。持っていなければ、相手の望むことを使役するということで交換することもあり得ます。「~してあげるから」という方法ですね。この交渉は言語で行われるとスムースですが、言語が通じなくても身振り手振りや、品物を見せ合い交換するという非言語的交渉によっても可能です。

ところが、今はさし当たり相手の望むものは持たないが、後に相手の望むものを提供できる当てがあるという場合、後の提供を約束して、今、目の前の物を得られないかという場合が出てきます。信頼や好意を担保に時間を超えた交換をすることになります。数人規模の信用貸しなら記憶に頼ることもできるでしょうが、数が多くなると、誰にどれだけ借りて、誰にどれだけ貸しているのか、管理が煩雑になります。

そこで、両者の同意の下に信用貸しの印を工夫しました。石でも貝殻でもいいのですが、時間によって変わらないものが望ましいでしょう。貨幣の発明です。互いの信頼が担保になれば粗末な物でも信用貸しの印になりますが、踏み倒された時の保険として、それ自体が食べることができたり(米)、希少性がある(金・銀)などの価値があれば担保価値があるというものです。これが貸し借りの両者だけではなく、複数の人の間で信用を担保するものだと承認されれば、物を貨幣に交換し、その貨幣で他の人との交換が可能になります。通貨ですね。通貨を貯めておけば、任意の時に任意の物と交換できることになり大変便利です。


このように、暴力、言語、通貨は、交換を仲立ちするものとして機能します。これらをまとめて交換媒体(コミュニケーション・メディア)と呼びます。自分が提供する分は少なく、相手から獲得する分は多くすれば、儲けたように感じますが、それは信頼を失い、長期的に見れば不利になります。ですから信用を維持するような安定した交換関係を継続するほうが、生存の可能性が高まることになります。

自給自足を補い、過不足を調整し、互いに安定した関係を維持しながら、互いに生存の可能性を高める。物流の手間が少なく身近で済ますことができれば、これが地産地消です。地産地消を成立させるにはなにより、互いの信用信頼が一番の基礎となります。そのような互いの了解が暗黙の掟となって成立しているところでは、よそ者は警戒されるでしょう。


地産地消は地元での交換ですから、その交換媒体は上納という権力でも、持ちつ持たれつの互助でも、通貨でもいいのです。本来、通貨は交換の手段です。通貨をいくら貯め込んでも、それを担保する信用が失われてしまえば交換することはできません。しかし、やはり効率的な交換には便利なものですから、共通通貨が信用を失っても、地域通貨が機能していれば地産地消の交換には役立ちます。

地域通貨については、通貨の信用喪失(インフレーション)に対するセイフティ・ネットとして、検討、導入の価値はあろうかと思います。

これもまた自給自足と同じように、食糧ばかりが対象ではありません。身近な人との間で智恵や知識を交換する。「美味しい!これどうやって作るの?」というのは普段からなされている交換です。教えを請う、教育を受ける、作ってもらう、やってもらう、世話してもらうなどなど。このような活動も地産地消の範囲に入ります。

0 件のコメント: